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zoom RSS 『東京の女』〜小津のアヴァンギャルド性〜

<<   作成日時 : 2010/04/02 09:10   >>

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シネ・ヌーヴォの田中絹代特集で,『マダムと女房』と併映されたのは・・

小津安二郎の『東京の女』(1933年)だった。

上映時間46分の中編,サイレントだが,戦後の小津作品にはないサスペンスドラマだ。

しかし,すでに小津安二郎の特質がよく表れていて興味深い。


ほぼ全編をローアングルの固定ショットでつなぐ手法は,もう確立されつつあったようだ。

ただ,戦後作品のナチュラルな感覚から比べると,キャメラはより仰角で

いかにもローポジションから見上げている感じが強かった。


映画の冒頭,岡田嘉子の姉がこちらを向くショットが実に印象的。

ああ,これこそ「小津」だ!と思った。

何やら,なまめかしくてドキッとするのだ。

丹精こめて微細に調整されたフレームから漂う空気感は,やはり小津作品ならでは。


例の会話場面での切り返しは,戦後作のような正面ショットはほとんどなく,

身体は斜め向きで,顔だけこちらを向いている場合が多い。

そのとき,二人の人物は,どちらも同じ方を向いていることが多く,

切り返すたびに,前のショットの残像が重なって,不思議な感じだった。


先日,東京のフィルムセンターで,篠田正浩監督のトークショーを聞いたとき,

「小津安二郎は松竹でただ一人のアヴァンギャルドだった」と言われたが・・

今回,サイレント時代の作品を観て,なるほど・・と思った。


合間に差し挟まれる脈絡の無いショットが,妙な感覚を植えつける。

例えば,主人公のモダンなアパートの一室・・

石炭ストーブの上で沸々と蒸気を吹くヤカンが要所で登場する。

ヤカンにピンを合わせて,肝心の登場人物を背景にボカして入れるなんて・・

普通ありえないショットだろう。


また,田中絹代が電話で悲報を聞く衝撃の瞬間・・

時計屋の壁に掛けられた無数とも思える柱時計の群れが映し出される。

時代的にも,ドイツ印象主義のイメージと重なる場面だ。


ドラマの展開には,やや中途半端なイメージが残ったが・・

元の脚本にある,主人公の姉は共産党員で,密命を受けて資金稼ぎをしていた・・

という設定部分がまるごと削られたためらしい。

この時代の映画らしいエピソードだと思った。


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