上方遊歩人のクラシックシネマ考

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zoom RSS 映画『マダムと女房』 〜日本初トーキー作〜

<<   作成日時 : 2010/03/23 00:43   >>

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ここしばらく仕事に忙殺されていて,息つく間もなかったが・・

この3連休は,久々に映画を観に出かけた。

シネ・ヌーヴォでは,土曜から「生誕百年 映画女優 田中絹代」の特集上映が始まっている。

3週に渡り,25本上映というかなりの規模のものだ。

初日に日本初のトーキー作,五所平之助の『マダムと女房』(1931年)がかかったので観にいった。

小津安二郎のサイレント作『東京の女』(1933年)と併映だった。


今の時代に,『マダムと女房』を劇場で鑑賞する機会が得られようとは・・

何しろ,1931(昭和6)年といえば満州事変が起こった年。

うちの母親が生まれる前だ。。


こんな若い「田中絹代」ははじめて見たし・・

ついでと言ってはナンだが,動く「井上雪子」もはじめて見た。

22歳の田中絹代は,何だかデビュー当時の松田聖子みたいで初々しい。

さすがに日本髪と和装が様になって,絶滅して久しい典型的な日本美人だ。


土橋式松竹フォーンは画と音のズレが大きく,技術的には稚拙なものだったようだ。

しかし,初トーキー作だけあって,やたら音にこだわったツクリになっている。

主人公がネズミや猫の鳴声,隣家の騒音などに悩まされる場面を,音の出所を映さず表現する。

これはサイレントではできなかったことだ。


それにしても・・

スクリーンに映し出される風俗的なものは,意外なぐらい今観ても違和感がない。

演劇の脚本家やジャズ楽団といった,当時としてはモダンな世界の住人ばかり描き・・

風雲急を告げつつあった「時代の空気」を消し去っている印象だ。

男女の力関係も,よく言われるような封建的な空気感はまるでなく・・

旦那が女房の尻にしかれるのは今も昔も変わらない。


ただ,伊達里子率いるジャズ楽団の演奏は,エエ〜!これがジャズ?・・

まるでチンドン屋サンのお囃子。。

また,田中絹代が娘に向かって言う,「おやつの時間までオンモで遊んでらっしゃい」なんて・・

私が子どもの頃までで終わっている習俗だろう。


やはり隔世の感有りというところだが・・

日本の原風景を定着したフィルムとしては,この上なく貴重なものだと思った。


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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
遊歩人様
凄いですね!日本初のトーキー映画「マダムと女房」を映画館でご覧になったとは!
私は噂に聞いた事はありましたがこのフィルムはまだ見た事がありません。
田中絹代と言うと、戦前〜戦後にかけての日本を代表する名女優ですよね。
トーキー前の無声映画時代の「伊豆の踊り子」は随分前にチラッとテレビで紹介された事があったのを見た事があります。
卵形で切れ長の目をしたおちょぼ口の可愛い日本人形みたいな顔立ちでした。
代表作の一つ「愛染かつら」は余り好きではありませんが「浪花女」や「西鶴一代女」は良かったですね。
中でも晩年に主演した「サンダカン八番娼館 望郷」での演技には脱帽でした。
親戚からの少額な仕送りを受け取るや否やそれで芋を買い、ボロボロの家の中でその芋を夢中で口の中に掻き込むシーンや、栗原小巻演じる女学者が取材のお礼にと、家の障子の張替と新しい畳をプレゼントされた時に見せた、新しい畳に頬づりしながら「美しか〜」と感嘆の声を洩らしたシーン。
あの場面を見ただけで、この女性がこれまで背負って来た人生が一目瞭然で分かりました。
まりりん
2010/06/06 03:43
まりりん様
いつもレスが遅くてすみません。
「マダムと女房」って,タイトルは有名ですが,劇場にかかる機会は滅多にないですよね。今回は運良く観ることができました。1930年前後のサイレントやトーキー初期作をたまに観る機会があるのですが,意外にモダンな感覚で驚くことがあります。むしろ30年代後半以降の国策映画っぽい作品のほうが無粋で古臭い感じがします。
田中絹代は「西鶴一代女」「山椒大夫」「雨月物語」など溝口作品は良いですね。ほか成瀬巳喜男作品も素晴らしいと思います。「愛染かつら」はダイジェスト版しか観ていませんが今の感覚で観るには正直ツライですね。「サンダカン・・」は衝撃的な作品で,あの元からゆきさんの演技は,まさに神品のごときものだと思いました。
遊歩人
2010/06/09 01:11
遊歩人様
お返事頂きまして有り難うございます(^O^)
返事が遅いなんてちっとも感じておりませんので、どうかお気になさらないで下さい。
日本映画史上、溝口・小津・黒沢・成瀬は正しく四天王と言ってよい監督ですよね。
成瀬作品は特に一本筋の通った芯の強い女性を描かせたらピカ一でしたね。
夜の蝶、当時の名称で言うなら女給が主人公の作品も多い記憶があります。
あまり有名な作品ではないですが「楽しき哉人生」とか「銀座化粧」「鰯雲」「妻」なんか好きです。
もちろん、有名どころでは原節子の演技が素晴らしい「めし」を始め「流れる」「乱れる」「浮雲」「秋立ちぬ」「放浪記」等もそれぞれに素晴らしいですが。
遊歩人さんが戦前の映画の方がむしろモダンだと仰った意味、よく分かる気がします。
例えが適切かどうか分かりませんが、以前「狸御殿」(出演者は多分当時活躍していた宝塚スター達)という日本の古いミュージカル映画を観た時、時代劇でありながらBMに「ボレロ」を使っていたり、着物での歌や踊りが、日本舞踊ではなく、とてもリズミカルでモダンなダンスだった事に非常な驚きを覚えた経験があります。
まりりん
2010/06/09 12:30

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