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zoom RSS 映画『ひとりで生きる』 〜シュールで孤独〜

<<   作成日時 : 2010/01/21 00:10   >>

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体調不良で,長らく更新が滞ってしまった。。

取りあえず,しばらく前にシネ・ヌーヴォで観たヴィターリー・カネフスキー作品について感想を。

観たのは,『ひとりで生きる』(1991年フランス・ロシア)という作品。

前作『動くな,死ね,甦れ!』の続編という設定で,主演の男女は同じ。但し,少女は前作で亡くなった女の子の妹という設定。

『動くな,・・』は,80年代も末の作品としては異例のモノクロ・スタンダードだった。

それがカンヌで賞を獲ったためか,本作は外国資本が入ってカラーになり,サイズもヨーロッパヴィスタに格上げされている。

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映画の規格面の向上にともなって,より綺麗な画が多くなり・・

その分,ドキュメンタリーっぽい感覚はやや薄れた印象だ。

反面,リアルでありながら,どこかシュールな画作りが目につくようになった。

例えば,映画の冒頭でまっ白な雪原に馬を引く日本人捕虜が現れるシーン・・

船の吐き出す蒸気の向こうに,遠ざかる夕景を眺めるシーン・・

濃い霧の中,深い入江を船が出帆していくシーンなど。

この監督,やたらと,蒸気や霧,吹雪などで画面を煙らせるのが趣味のようだ。

それが画面にある種,重層的な奥行き感をもたらしている。


対極的に,汚い画?もふんだんに見せてくれる。

前作より子どもたちが大人になった分,思春期特有のセックス描写が多くなった。

しかも,やたらと少年の尻と女性の陰毛を見せたがる。

道端に倒れこんでいる少年の顔に,オバサンがおしっこをかけるのにはまいった。

前作もそうだったが,やたらしょんべん描写が多い人だ。

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主人公の少年と,その守護天使たる少女の関係は,前作より恋愛の度合いを強くしている。

少女が少年をつっけんどんにしながら,恋い慕う描写は初々しく切ない。

思春期の感受性の強さ,繊細さを,独特の空気感でフィルムに定着する技量は卓越していると思った。

人と人との関係性がより希薄になって,漂泊する孤独感が強まり・・

少年が行く先々で疎外される描写は,居座りの悪さが身に沁みた。


それにしても,凄いのは,「殺し」の映像だ。

最初の方で,飼っていたブタを寄ってたかって押さえ込み,大きなナイフで本当に腹を割いて殺してしまった。

目を背けたくなる凄惨なシーンで,悲痛なブタの鳴き声とともに,「死」の刻印が脳裏に焼きつく。

そのあとすぐにオッサンの尻を見せ,泣く子を笑わせたりする。

ラスト近くでは,捕らえた沢山のネズミに火を放ち・・

炎に包まれながら走り回るネズミをキャメラは冷徹に見つめる。

これらは,劇映画ではまず見ることのない映像で,邦画やアメリカ映画では絶対ありえない。


それにしても,最後のほうで,シュールレアリスティックな「悪夢」を見せたのは何だったのだろうか。

少年が見たのは,死んだ少女の亡霊か?

いよいよイメージの連鎖が一人歩きしがちになり,もうストーリーは追えなくなっている。

もともと語るほどの物語はなく,短いエピソードの集積で映画を紡ぐ作風だし・・

自らの感性で撮りたい画を撮っているのが良いのだ。


本作で,少年はいよいよ孤独感を強めていくが・・

なぜか,日本人捕虜に対する視線だけが敬愛に満ちていた。


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