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zoom RSS 『浮草』 〜宮川一夫が撮った唯一の小津映画〜

<<   作成日時 : 2009/08/29 14:39   >>

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先日,帰宅すると,NHKBS2で小津安二郎の『浮草』が放映されていた。

何度も観ているのに,また,全編通して観てしまった。


別に小津作品を特集するわけでもなく,単発的な放映のようで・・

何で今ごろ?と思ったら・・

その前日に溝口健二『雨月物語』,翌日に篠田正浩『瀬戸内少年野球団』という一連の放映。

ああ〜なるほど!

宮川一夫特集なんだ,と気づいた。


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世界的に知られる撮影監督・宮川一夫は,今年で没後10年を迎え・・

一部新聞などでマニアックな特集が組まれている。

BSの放映は何も銘打っていないし,誰も気づかない・・

というか,「宮川一夫」と言ったところで,ピンとこない人のほうが多いのだろう。


黒澤明の『羅生門』での,森の中の逆光撮影は有名だし・・

市川崑『おとうと』で宮川が編み出した「銀残し」といわれる技法は,世界の映画界に影響を与えた。

ただ,やはり宮川一夫といえば,『雨月物語』をはじめとした溝口健二の諸作にとどめを刺す。

この時代,溝口・宮川コンビで映画を撮れた大映は恵まれていたのだ。


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小津安二郎との仕事は,昭和34年の『浮草』1本だけ。

それも無理はなく,小津は松竹だし,大映にいた宮川とは縁が薄かった。


この前年,小津初のカラー作品『彼岸花』(松竹)に,大映は門外不出の看板女優・山本富士子を貸し出した。

その見返りとして,小津は大映で1本撮ることになり,『浮草』での宮川とのコラボが実現した。

といったような話だったと思う。


『浮草』は,小津自身が戦前に撮ったサイレント作『浮草物語』のリメイク。

旅回り役者一座がある田舎町にやってきて・・というシチュエーション自体が,

昭和34年当時,すでに陳腐化していたこともあり,公開当時は評価されなかったらしい。


しかし,いつもの小津作品と違って・・

複雑な人間関係からくる愛憎のもつれと,激しい葛藤場面があり,

珍しく若い男女(川口浩&若尾文子)の接吻シーンが繰り返されるなど,

けっこう見どころも多い。


本作は,全編に宮川一夫撮影のカラー映像が素晴らしく・・

小津作品特有の厳密な構図に,秀麗な色香が漂う。


なかでも,夕立のさなか,軒先に雨宿りする中村鴈次郎と京マチ子が道を挟んで言い争うシーンが秀逸。

正面ショットで,役者の立ち居振る舞いの美しさ,その発散するオーラを見事にフィルムに定着し・・

それを例によって切り返しでつなぐエキセントリックな映像リズム。。


この磨きぬかれた感覚は,映画というメディアの一つの到達点であり,職人技の極みだと思う。

最近の日本映画を観ていて,たまに小津や溝口の作品を観ると,いつもしたたか打ちのめされてしまう。

やはり,「映画の時代」は遠くなりにけり・・ なんだろうか。。


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