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zoom RSS 映画『浪漫者たち』 〜風景に宿る霊気を撮る〜

<<   作成日時 : 2009/07/06 00:53   >>

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今朝はシネ・ヌーヴォのモーニングショーに出かけた。

観たのは,私としては珍しく,邦画の新作で『浪漫者たち』という作品。

と言っても,インディペンデント系で,公式サイトを見ても,まともに上映予定すら載っていないような一作だ。


監督の田中千世子という人は,もともと映画評論家だが,ドキュメンタリー映画を何本か撮って評価された人らしい。

そして,本作が劇映画としてのデビュー作なのだとか・・


それにしても,今の時代に,まさか「映画」で日本浪漫派・保田與重郎をフィーチャーするとは・・

保田與重郎と聞いて,ピンとくる人が世の中にどれくらいいるのだろうか?


私は,多少の縁あって,保田與重郎という存在は知っていた。

しかし,未だ,まともにその著書を読んだことはない。

読もうとしても,文章が難解なのと,日本の古典やドイツ・ロマン主義のベースがないと読解不能とか言われ,ずっと二の足を踏んでいる状態だ。


保田は,取り巻きに,民族派など右翼が多かったせいもあって・・

戦前の国粋主義思想との結びつきでとらえられがちだ。(映画の中にもそんな台詞があった)

しかし,もともと右の左のといった近代思想の対立軸とは,一線を画した人だったのではないだろうか・・


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映画は,奈良の桜井・三輪を訪れた劇団員の青年が,偶然,保田や日本浪漫派に触れたことで,心中に何かが芽生え,変容していくといったものだが・・

別段,保田の思想を詳しく紹介したり,深入りしたりするわけではない。

そういうことは,映画を観ても解るものではないと,最初から割り切っていて,

「イロニー」などの言霊を投げかけながら,観ている方には,謎めいた響きだけを残していく。


主人公の伊勢谷能宣という青年は,実際に演劇界のホープと呼ばれる人らしいが・・

その他,俳優としては佐野史郎と石川真希(この二人は確か夫婦)ら少数。

あとは能楽師やお茶の先生,ピアニスト,ネット書店経営者に学生といった素人の出演者が,現実世界そのままの役回りで登場する。

なかでは,佐野が演ずる神出鬼没な怪紳士?が,映画のアクセントとなってシュールな印象を残した。


全体に芝居は生硬だし,劇的な物語やケレンに富む映像があるわけではない。

退屈するかと思ったが,さにあらず・・

映像的には,不思議に惹きつけられるものがあった。


大和三輪山の神々しい山容,神社の境内から森林へと続く結界のたたずまい,能舞台の簡素な構造と柔らかな光線・・ 

日本的な被写体に宿る「霊的なもの」をフィルムに定着しようとした印象だ。

観終わった後に知ったのだが,デジタル撮影ではなく,35ミリフィルムを用いたらしい。

映像に温かみがあり,独特な空気感があった。

ただ,そういった映像に比して,劇中劇の方は,画も演出もやや弱い感じは否めなかった。


じつは随所に笑いの間が埋め込んであって,客席からは笑声が起こらなかったが,私は一人クツクツ笑っていた。

全体として,出来は悪くないと思った。

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