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zoom RSS 映画『厳重に監視された列車』 〜先入観は木っ端みじん〜

<<   作成日時 : 2009/07/02 00:52   >>

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第七藝術劇場で「メンツェル映画祭アンコール」という特集上映が行われている。

アンコールというからには,過去にそういう映画祭があったということなのだろうか?


イジー・メンツェルは,60年代から活躍する旧チェコスロバキアの映画作家だそうだが,不肖にして私はよく知らなかった。

今回の上映作品は3本だけだが,そのうち,もっとも初期の『厳重に監視された列車』を観てきた。


1966年作というから,「プラハの春」の民主化運動と,それに続くソ連軍による介入より2年前の作品だ。

その厳めしいタイトルや,冷戦時代の社会主義国家というイメージからくる,ある種の先入観は,映画が始まってしばらくすると,木っ端みじんに吹き飛んでしまった。

自由の制約が多い東側世界で,よくここまで露骨にスケベな感性を表現する映画を撮れたなと思う。


チェコスロバキアがナチスドイツの占領下にあった時代に材を取り,

鉄道員見習いとして小さな田舎駅に勤めはじめた少年の「性の目覚め」をモチーフにした作品。

これは予想外のセックスコメディで,特に後半はもうフツフツトわき出す笑いを抑えられなかった。


どこか牧歌的で大らかな人間賛歌は,ジャン・ルノワールを思わせるが・・

しかし,ルノワールのような祝祭感覚よりは,シニカルにひねったブラックな感覚を基調にしている。


これを,当時の共産主義政府がホントに認めたのだろうか?

同じ年に同じチェコスロバキアで撮られた『ひなぎく』を観たときも,共産圏の映画とは思えないぶっ飛んだ感覚に驚いたことがある。

アヴァンギャルドな『ひなぎく』とは違って,本作は,ふつうにストーリー性を持った解りやすい作品ではあるが・・

しかし,抑えきれない自由への憧憬には,どこか通底するものを感じる。


それにしても,本作に登場する女性たちは,皆,なんと大らかで開放的で,魅力的なことだろう。

昨今の映画みたいな無粋で直接的なセックス描写は微塵もないのに,

でありながら,これほど官能的であるというのは素晴らしい。

しかも,不思議に清々しくて,ちっとも嫌らしさを感じないのだ。


先輩の駅員が女子職員との夜勤の最中,情事に耽り,女の太ももからお尻にかけて,駅の事務印を押していく場面が印象的だが・・

スゴイのは駅長夫人で,早漏に悩んだ少年が相談に訪れると,アヒルの長い首を手でシコシコしごきながら,何もかもお見通しとばかりにやんわりと少年を拒否する。これは暗喩が効きすぎだ。


そしてあの衝撃のラストシーン。

そこまで大らかにクツクツと笑っていただけに,ブラックな感性に背筋が寒くなった。

こういう終わり方をする映画はほかにもあるが,本作は意外性という点でも秀逸。

これはなかなか一筋縄ではいかない,映画的な感性に富んだ希少な1本であると思った。

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