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zoom RSS 映画『詩人の血』 〜血の官能美〜

<<   作成日時 : 2009/05/13 22:42   >>

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ジャン・コクトーといえば,映画の世界では,『美女と野獣』や『オルフェ』などで有名だが・・

もともとは詩人で,作家で,劇作家で,画家で・・

つまり何者?という多芸多才の人だから,映像作品はそう多くはない。

そんなコクトーの,これは映画監督処女作なのである。


幼い頃から,家にあった小学館の百科事典で,本作のスチールを目にしていて,その印象が長い年月,脳髄にこびりついていた。

そして,ようやく劇場で観ることができた。


50分程度の中編だが,何しろ,物語のない断片映像集のようなものだから,これぐらいの上映時間で丁度だと思う。

そういえば,同系列(?)の作品でも,パラジャーノフの『ざくろの花』(73分)は長く感じた気がする。


******************

1930年の作品で,すでにトーキーだが,サイレント期のいわゆるアヴァンギャルド映画の延長上にある。

とは言っても,ブニュエルの『アンダルシアの犬』やグレミヨンの『燈台守』,ドライヤーの『吸血鬼』のような悪夢的な映像ではない・・

シュールレアリズムの系類のうちでも,コクトーはタッチが軽くて,どこか明るい印象だ。

見世物小屋の手品や軽業みたいな珍妙なリズム感で,思わず笑いが漏れてしまいそうになる。

そして何より,コクトーは官能的なのだ。


******************

最初のシークエンスは,手のひらに口が乗りうつってしまって悩む男。

なぜかずっと上半身裸のこの男は,ダラダラと液体を垂らすその口と接吻し,さらに首筋や乳首に手のひらを這わせて恍惚となる。

性的倒錯を暗喩的に表現した・・ なんて言えばもっともらしいが,何だか無性に可笑しくなってくる。


壁と床を逆に設えたトリック撮影など,初歩的なものだが,当時はけっこう不思議な映像だったのだろう。

それにしても,目を閉じた上瞼に,死んだ魚のような目を描いたりするのは,いったい何なのだろうか?

どうも,私の笑いのツボにはまってしまう。


******************

『詩人の血』というタイトル通り,噴き出す「血」にこだわっている。


ピストルでこめかみを撃ち抜いて,スローモーションのように血が飛散し・・

雪つぶてをぶつけられた少年が,倒れて口の端からダラダラと血を流す。


それは,「血」を吐くように,詩句をひねり出す詩人の思いそのものか。

それとも,何かのフェティシズムを隠喩的に表現したのだろうか。


コクトーらしく,血を流すのは若い男や少年ばかり。

女優は添え物的で,髪をまとめ上げ,どこか中性的で少年の面影を宿す。


アヴァンギャルド映画は,商業映画とは違って,本来,作家の内面を表現する手段として存在する。

そこには,ある種の世界の住人にしか感得できない,妖しい官能美が潜んでいるのかもしれない。


残念ながら,われわれ凡人は,それを「詩的」としか表現のしようがない。


ジャン・コクトー DVD-BOX (トールケース仕様)
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2003-11-11

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