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zoom RSS 『ハリウッド監督学入門』 〜映画製造工場の正体〜

<<   作成日時 : 2009/05/23 15:37   >>

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先日,第七藝術劇場で観た,ちょっと変わったドキュメンタリー映画。

中田秀夫氏が『リング2』をハリウッドでリメイクした体験や,その後の企画の頓挫などの経験を元に,映画製造工場「ハリウッド」の舞台裏を明らかにしていくといった趣向。


ひょっとして,各方面から表現の制約があったのか,全体に調子は柔らかい。

ハリウッド映画人へのインタビューを中心に,大まかに輪郭づけをしたといった印象で,強いメッセージを発信するという姿勢はない。

しかし,本作を観終わったとき,私は・・

なぜ自分がハリウッド作品を遠ざけるようになったのか,その理由の一端を明確にできた気がした。


<注)ここからはネタバレ!>


企業ビジネスとしてのハリウッドの商品開発は,グリーンライトが点る(製作にGOサインが出る)までの気が遠くなるような膨大なステップに集約される。

配給・製作会社,プロデューサー,撮影所,俳優プロダクション・・

それぞれが主張を通すことに躍起となり,ともすれば作品の中身は置き去りにされる。


企画が通ったのは「運が良かった」からだ,とあるプロデューサーが語る。

「『リング2』は独立プロだからできた。撮影所に任せていたらできなかっただろう」

背景にあるのは,日本とは比べ物にならない製作規模の大きさ,動く資金の巨大さ・・

背負うリスクがあまりにも大きいのだ。


何年もかけてようやく企画が通り,1本のシナリオの完成に数年を費やす。

そして,映画作家の「作品」ではない,企業の「商品」としてのハリウッド映画が生み出される。


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だいたい映画の撮り方そのものが日本とは違う。

例えば,「カヴァレッジ」とよばれる撮影手法。

監督が自らのセンスで割り振った絵コンテに沿って撮影するのではなく・・

現場では,1つのシーンやショットを,角度やサイズを変えた様々なアングルで撮影しておく。

そして,編集段階で良いものを選んでつなぎ合わせる。

そこには,俳優に切り刻んだ演技をさせたくないという,いかにもハリウッドらしい演技中心志向があり・・

編集時にセレクトの幅を広げるといった合理化志向があり・・

そういったものが,映画作家のセンスや個性よりも優先されるのだ。


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さらに,テストスクリーニングという,一般の観客を入れた試写でのアンケートがあり・・

その意向によって,映画そのものの構成やラストが変更されてしまう。

中田氏は「工業製品の開発のようだ」といった意味の感想を漏らす。


アメリカでは「テンポ」と「ラスト」が重要だと,あるプロデューサーが語る。

観客が退屈しないテンポと,解りやすくスッキリ納得できるラスト・・

その背景にあるのは,観客の多様性。

さまざまな人種的・民族的背景を持った誰もが理解できる明快な構成や結末。

日本のような作り手と観客の間の同質性や,それに寄りかかった「暗黙の了解」は,アメリカにはないのだ。


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作中で,編集者が語る話は,映画ファンとして身につまされる。

映画は,もちろん大スクリーンで観ることを念頭に編集をするが・・

アメリカで,映画を劇場で観る客が25%なのに対して,DVDで観る派は40%にものぼる。

映画の劇場公開は,事実上,DVDを売るための宣伝になっているのだ。


中田氏や清水崇氏によると,日本ではもっと現場でやりたいことができるらしい。

だからといって,今の日本映画が優れていると思えないところは悲しいが・・


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公式サイトを確認すると,上映館は今のところ全国で9館しかない。

そのうち,東京が1館なのに対して,関西では,ナナゲイのあと,京都シネマ,神戸アートヴィレッジセンターと3館で上映予定。

なぜか,こういうマニアックなシネマをかけたがる風潮が関西にはある。

旧作上映はなかなかやってくれないのに・・

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